| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-G-246  (Poster presentation)

アライグマの樹洞営巣性を利用した巣箱型捕獲ワナの開発と有効性の検証

*池田透(北海道大学), 島田健一郎(北海道大学, 大分市役所), 鈴木嵩彬(北海道大学), 田中一典(北海道大学)

  従来の誘因餌を用いた箱ワナによるアライグマ捕獲では、誘因餌の交換と在来種との混獲確認のために設置した箱ワナを毎日点検する必要があり、アライグマ捕獲数が減少しても作業コストが低下せず、防除事業を長期的に継続することが、予算や作業員の確保という点で困難であるという欠点があった。 
  そこで本研究では、アライグマの樹洞営巣性という習性を応用して、誘因餌の不要な巣箱型ワナの開発を試みた。動物園個体を用いた実験で、アライグマの好む巣箱の形状を決定し、さらにGPS端末を利用した捕獲情報通知システムを装着することで、一旦巣箱型ワナを設置すれば、捕獲情報が入るまで確認作業を必要としない、大幅な低コスト捕獲システムの構築を目指している。捕獲情報通知システムの初期投資及び運用中の通信コストも、箱ワナ作業の人件費に比して大幅に低価となり、防除事業の予算の低減と長期化が実現可能と考えている。
  アライグマ侵入地域での試験的設置では、誘因餌がないために捕獲までには時間を要するが、自動撮影カメラの記録によって巣箱型ワナを訪れた個体は繰り返しワナを訪問し、高い確率で捕獲されることが確認されており、特に低密度地域において低コスト化の効果・効率が期待される。
  試験的導入を進めてきた大分市のアライグマ防除事業では、これまでに通常の誘因餌を用いた箱ワナによって市内全体で低密度状況を達成した上で、巣箱型ワナを導入して22頭を捕獲することができた。また、今年度の防除事業においては、巣箱型ワナを用いた捕獲効率は、通常の箱ワナよりも高く、低密度地域での巣箱型ワナ導入の効果と効率が立証されている。
  今後は、素材の検討を加えて軽量化と耐久性の向上を目指すとともに、低価格での販売が実現できるよう開発を進めていく予定である。


日本生態学会