| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-H-254  (Poster presentation)

菌類メタバーコーディングによる河川水中の菌類相評価

*松岡俊将(兵庫県立大学・院・シミュレーション), 佐藤博俊(龍谷大学), 土居秀幸(兵庫県立大学・院・シミュレーション)

菌類メタバーコーディングは,特定の基質を対象とし,そこに含まれる菌類マーカー遺伝子を網羅的に検出・同定を行う方法である.従来の菌類の単離を伴うあるいは個々の菌類DNAを対象とした手法に比べて,菌類相調査を飛躍的に短時間で行えることから,様々な環境における調査で用いられ始めている.近年,森林内を流れる河川水中には,水中で生活する菌類に加えて,周囲の陸域(集水域)に生息する菌類の遺伝子が含まれうることが示された.これは,河川水を対象としたメタバーコーディングを行うことで,集水域の菌類相情報を得られる可能性を示している.しかし,従来の菌類メタバーコーディング研究の多くは,陸域における植物体や土壌中に含まれる菌類を対象としたものであり,河川水を対象とした研究は少ない.そのため,河川水中からどのような菌類が検出されるのか,そして菌類相は周囲の環境情報を反映するのか,あるいは空間構造を持っているのかはほとんど分かっていない.
そこで本研究では,河川水を対象とした菌類メタバーコーディングを行うことで,河川水中にどのような菌類が含まれているのか,そして菌類相は周囲(集水域)の環境を反映しているのかを調査することを目的とした.サンプリングは,2015年の5月,9月,10月に兵庫県西部にある揖保川上流域で行った.異なる支流を含む計19点(約10㎞以内)において,川の中心部から1-5Lの水を採集した.採集した河川水はフィルターろ過を行い,ろ紙からキットにより全DNAを抽出した.MiSeqを用いて各サンプル中に含まれる菌類ITS1領域の塩基配列を決定した.配列は97%の相同性により操作的分類群(OTU)にまとめ,データベースとの比較により分類群の推定を行った.本発表では,調査地から検出された菌類の分類群・機能群と,調査点間の菌類相の類似性とその要因についての解析結果を紹介する.


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