| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-H-267  (Poster presentation)

西日本ブナ林生態系の葉群動態に関する野外調査

*戸田求(広島大学・院・生物圏)

気候変動下にある陸域植生の炭素吸収能評価を行う上で、葉群動態の季節性(フェノロジー)を定量化することは重要である。近年の気候は温暖化の様相を呈し、すでにフェノロジーのタイミング(葉の着脱)や遷移過程(芽吹から完全開葉、落葉開始から完全落葉)に大きな影響を及ぼしている地域も観測調査を通して確認されている。西日本の中高標高域の山地帯にはブナ林の生態系が分布し、場所によっては保存林に指定されてもいる。筆者は、温暖化の影響が出つつある広島県中央部のブナ林生態系を対象に、生態系炭素循環の解明に向けた野外調査を開始し、その一環としてフェノロジーのモニタリングを継続してきた。本研究発表では、このモニタリングで得られたブナ林生態系の葉群動態の季節変化について報告する。調査地は、広島県東広島市の標高900mを超える鷹ノ巣山である。近隣(東広島)の気象台データに基づき過去30年間の気温を10年ごとに平均して調べた結果、同地域では13.3度から13.9度とわずかに増加傾向を示した(土井, 2017)。本調査地はブナ、モミを優占種とする代表的な暖温帯落葉広葉樹の巨木が存在するが、近年はアセビやシキミなどサイズの小さい常緑広葉樹などが目立つ。この森林内で、2016年4月よりデジタルカメラを用いた連続撮影を実施し、同時にリタートラップ、また光合成有効放射量計測から微気象学的手法による葉群動態の推定を実施した。さらに遷移過程の推定を行うためのデータ解析を行い、デジタルカメラからの推定値との比較を行った。その結果、推定された葉群動態値は、およそ方法の違いによらず同程度の値を示すことになったが、計測手法の特性を反映しばらつきも見られた(土井, 2017)。本発表ではこの結果を示すとともに、デジタル画像による葉群動態定量化の可能性に向けた今後の解析案についても検討・議論する。


日本生態学会