| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-J-308  (Poster presentation)

中山間地域の無居住化に伴う蝶類群集の変化

*杉本直輝(東京大学大学院農学生命科学研究科), 深澤圭太(国立研究開発法人国立環境研究所), 宮下直(東京大学大学院農学生命科学研究科)

日本は人口減少の時代に入り、中山間地域を中心に無居住化する地域が拡大することが予想されている。それに伴う土地利用変化は伝統的な里山景観、そしてそこに生息する多様な生物にとっての脅威になると考えられる。国土スケールで進行する人口減少に対して有効な生物多様性保全戦略を考えるには、広域で負の影響を受けやすい種群を明らかにした上で、生物群集への影響の大きさを面的に評価する必要がある。
そこで本研究は、全国各地の無居住化集落と有人集落を調査し比較することで、蝶類に及ぼす無居住化に伴う土地利用変化の影響を明らかにすることを目的とした。
 調査では、無居住化集落では過去の、有人集落では現在の土地利用形態にもとづいて集落内に複数の調査地点を設け、それぞれの地点で出現した種名を記載することで集落ごとの各種蝶類の出現頻度を調べた。解析では階層ベイズモデルを用いた。応答変数には集落ごと各種の出現頻度、説明変数には無居住化集落か有人集落かのカテゴリ変数(「集落」)と各集落の年平均気温をモデルに組み込んだ。そして、各種の「集落」の係数を各種の生息地タイプに関する線形モデルとすることで、無居住化の負の影響を受けやすい生息地タイプを明らかにした。推定されたモデルから、日本地図の3次メッシュごとの群集組成と各種の生息地タイプのデータを用いて無居住化の影響を全国評価し、将来無居住化した際に種組成の変化が大きい地域を明らかにした。
 解析の結果、ベニシジミやモンキチョウ、ツバメシジミなど、草地と農地、人家を生息地タイプとする蝶類は管理放棄から負の影響を受ける傾向が見られた。また、全国評価の結果、中部地方の山間地域と東北地方の太平洋側、北海道地方の低標高地域で、土地利用変化の強い負の影響が見られた。


日本生態学会