| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-J-311  (Poster presentation)

DNAバーコーディングを利用した新種記載

*遠山弘法(九州大学)

熱帯雨林は、世界の樹木多様性の90%以上を占めるといわれており、近年でも多くの新種が見つかっている。しかしながら、形態に基づく種同定・新種記載には多くの時間が必要とされ、多様性評価のボトルネックとなっている。また、熱帯林で研究を行う分類学者の減少が、この状況に拍車をかけている。このような状況下で、DNAバーコーディングは分類学的発見の手助けとなる。発表では、新種記載におけるDNAバーコーディングの有効性を示した2つの事例について紹介する。Eustigmaはマンサク科に含まれ、小さな花弁と大きく引き伸ばされた雌蕊を特徴として持つ。中国、ラオス、台湾、ベトナムに3種しか知られていない小さな属である。DNAバーコーディングにより、花のない標本から属を特定し、その他の特徴からEustigma honbaenseを記載した。Euphorbia亜属は、Euphorbia属の中で最も多型的なグループで種数も多い。rbcLmatKtrnKndhF、ITS領域を用いた系統解析から新節Bokorenses、新種Euphorbia bokorensisを記載した。DNAバーコーディング領域として標準的に使われるrbcLmatKは、Eustigmaのような比較的古いクレード内での種の識別に有用であった。一方で、より最近分化したEuphorbiaにおける種の識別には、ITS領域が有用であった。我々の研究は、DNAバーコーディングが新種発見および記載において有効な方法である事を示した。 また、東南アジア植物のDNAバーコーディングは、急速に失われている熱帯雨林の種の多様性を記述する有効な方法だろう。


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