| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-J-312  (Poster presentation)

環境DNAメタバーコーディングによる魚類相の把握-六甲山系の小河川群における事例-

*中尾遼平(神戸大院・人間発達環境), 山本哲史(神戸大院・人間発達環境), 宮正樹(千葉県博), 源利文(神戸大院・人間発達環境)

環境DNA分析は河川や湖沼などの環境水中に含まれる生物由来のDNAを検出する分析手法の総称であり、水生生物の生息現況の評価などに利用されている。魚類では、すでに次世代シーケンサーを用いた環境DNAメタバーコーディングによる大規模な種判別の手法が確立されているが、本手法を野外サンプルへ適用した事例は不足している。そこで、本研究では兵庫県の六甲山系を選定し、そのなかでも表六甲水系とよばれる六甲山系神戸市周辺の小河川群を対象とした。表六甲水系の小河川群は,水源となる六甲山から大阪湾までの距離が短く急峻であることが特徴である。表六甲地域は主に神戸市や芦屋市などで構成される大規模な市街地となっており、各河川は市街地を通って大阪湾へ流れ込む。多くの河川は三面護岸で整備された単調な河川構造であるが、一方で夙川や住吉川などの主要河川は自然河床のものが多く、上流から中流まで多様な環境が維持されている。狭い地域内に小河川群が密集し、河川間で環境が大きく異なる表六甲水系では、河川間で異なる魚類相が形成されていると考えられる。一方で、魚類相の現状に関する記録は乏しく、詳細な情報の収集および蓄積が求められる。生息する在来魚の種組成や外来種の移入状況を把握することは、当該地域の生物多様性を保全していくうえで重要な知見となる。加えて、市街地の水域には、物理的な隔離などを要因とした希少種の思わぬレフュージアが存在している可能性も考えられる。本研究では、六甲山系表側の小河川群108地点において環境DNAメタバーコーディングによる大規模な魚類相の把握を試みた。今回は、環境DNAメタバーコーディングによって各河川から得られた魚類相から、上流から下流まで含めた各河川の特徴や過去の記録に基づいた魚類相の変遷について紹介する。


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