| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-K-331  (Poster presentation)

MIG-seq法を用いたクスノキ科シロダモ属の系統関係解析

*満行知花(東北大・農), 田金秀一郎(九大・理), 矢原徹一(九大・理), 陶山佳久(東北大・農)

世界有数の生物多様性ホットスポットである東南アジアの森林では、現在も未記載種が数多く発見され、より正確な種多様性の評価が求められている。近年開発されたNGSを用いたSNP探索手法であるMIG-seq法は、ゲノム情報の全く無い未知の生物であっても、共通した手法によってゲノムワイドな解析が可能なため、複数種を対象とした種間関係解析への応用が可能である。本研究では、多くの未記載種が存在する東南アジア産クスノキ科シロダモ属について、MIG-seq法で得られた配列情報を用いてそれらの系統関係を推定した。材料として、インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナム、台湾、日本で得られた未記載種を含む計76サンプルを対象とした。一部改良したMIG-seq法に従って、MiSeqを用いた1ランで配列情報を取得し、得られた各80ベース計11,809座の配列有無情報を用い、近隣結合法による分岐図を作成した。その結果、先に行ったITS領域による解析と形態情報から、新種の可能性が示唆されていた14種21個体すべてで、MIG-seqデータからもその位置付けが支持された。また、ITS領域の情報取得が困難だった2個体でも、同一DNA試料からMIG-seqデータが得られ、それらの系統関係情報が取得できた。形態、ITSおよびMIG-seq情報に基づいて全76サンプルの系統関係を総合的に判断した結果、解析サンプルは35種で構成されていると考えられ、うち既知種が13種、新種が22種であると認められた。これまで、MIG-seqデータは主にSNPによる集団遺伝学的解析に使われてきたが、本研究では共有配列の有無情報が系統関係情報として有効に使えることを示した。今後、他の分類群についても同様の解析方法によって系統関係が推定できると考えられ、新種の発見をはじめとして、正確な種多様性評価への貢献が期待できる。


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