| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-L-343  (Poster presentation)

山地の天然林に生息する土壌動物群集の形成プロセスの解明

*池田紘士(弘前大), 福森香代子(産総研), 加賀谷悦子(森林総研), 高橋正通(森林総研), 伊藤雅道(駿河台大), 酒井佳美(森林総研九州), 松本和馬(国際環境研究協会)

生態系全体を理解するうえで、地上だけではなく地下に存在する生物群集の構成を理解することは重要である。しかし、地下の生態系は地上と比べて不明な点が多く、生物の群集形成プロセスについても全くわかっていない。地下は地上とは環境が大きく異なるため、群集の形成プロセスも特異的な可能性がある。本研究では、地下に存在する土壌動物の群集形成プロセスを明らかにするため、ミミズを対象とし、日本の天然林12地点で採集するとともに、その生息環境を調べた。その結果、フトミミズ科、ツリミミズ科、ジュズイミミズ科のミミズが計553個体採集された。これらのサンプルについて遺伝子解析を行い、3つの遺伝子領域の塩基配列をもとに系統樹を作成した。その系統樹を用いて、優占するフトミミズ科とツリミミズ科に関し、群集形成プロセスに影響する主要因である生物地理的要因と進化生態的要因の2つが与える影響を調べた。その結果、地理的に離れた地点間ほどミミズ群集の系統的類似性は低い傾向がみられ、生物地理的要因は長い時間スケールでどちらの分類群の群集形成にも影響してきたことが明らかにされた。また、フトミミズ科においては、生息環境の違いの大きい地点間ほど、群集の系統的類似性は低い傾向がみられ、進化生態的要因が群集形成に影響してきたことが明らかにされた。さらに、生息環境とそこに生息するフトミミズ科の腸盲嚢の形態には関連が認められた。このことからフトミミズ科においては、腸盲嚢の進化に伴う環境選好性の変化が群集形成プロセスに影響を与えてきたことが明らかにされた。


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