| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-L-358  (Poster presentation)

森林から半砂漠環境への適応進化の遺伝的基盤の解明:キューバアノールトカゲを用いて

*石井悠(東北大・生命), Antonio Cádiz(ハバナ大学), Luis M. Díaz(キューバ自然史博物館), Karolis Janusevicius(東北大・生命), 赤司寛志(東北大・生命), 丸山真一朗(東北大・生命), 河田雅圭(東北大・生命)

キューバに生息するアノールトカゲの一種Anolis homolechisは、平均気温30度前後の森林の林縁部に生息しているが、キューバ南東部の半砂漠地帯には森林部より気温が約5度高い環境に生息する集団が存在する。この集団の個体では高温での活動能力が森林に生息する集団よりも高いことが確認されている(Kishibe et al. in prep.)。本研究では、この半砂漠地帯の集団を含むA. homolechisを用いて、高温環境への適応進化を可能にした遺伝的基盤を解明することを目的とした。半砂漠地帯の集団と系統的に近縁である近隣の森林集団、及び山岳地帯の集団の3つのA. homolechis集団についてddRAD法を用いて得たSNPを用いて、STRUCTURE解析及び半砂漠集団で自然選択を受けた遺伝子の探索を行った。さらに、半砂漠地帯の集団と山岳地帯の集団の個体のRNAseqを行い、コーディング領域の配列比較を行った。STRUCTURE解析の結果、3つの集団のうち、半砂漠地帯集団及び近隣の森林集団は、山岳地帯の集団とは別のグループに分かれることが明らかとなり、高温環境への適応にはSTRUCTURE 解析で検出されない程度の少数の遺伝子が関与すると推察された。また、ddRAD法を用いて得られたSNPにより半砂漠地帯で自然選択を受けたと予想される遺伝子候補を検出したところ、コーディング領域の配列の分化度(FST)が集団間で高い遺伝子を得ることができた。得られた遺伝子のうち、グリコシレーション反応に関与する酵素をコードするb4galnt4はコーディング領域に非同義置換が存在し、集団間で変異が維持されている可能性が高いことが示された。解析により得られた遺伝子の機能に着目し、半砂漠集団の高温環境への適応を可能にした遺伝的基盤と進化機構について考察する。


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