| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-L-360  (Poster presentation)

微小陸貝の身の丈にあった多様化

*和田慎一郎(森林総合研究所)

のろまな陸産貝類(カタツムリ)はその移動性の低さゆえ地理的に隔離され、多様化が促される例も少なくない。その一方で、カタツムリは島嶼をはじめ世界中に広く生息している程度にはフットワークの軽い生き物でもある。もちろんこれは自力移動に限らず、海流や鳥付着散布などといった受動的分散による部分が大きいと考えられる。カタツムリは殻に引き篭ることで悪環境に対して比較的長期間耐えることができるため、他の生き物が耐えられないような過酷な長距離分散もやり遂げられるのだろう。また、長距離分散の成功率はサイズに依存する側面があり、実際に海洋島をはじめとした島嶼では小型のカタツムリが多い傾向があることも知られている。日本の海洋島である小笠原諸島もその例にもれず、生息する多くのカタツムリは1cmにも満たない小型なものばかりである。中でも殻サイズが2~3mmの微小なグループでは受動的分散がよりおきやすいためか、同じ種が列島や諸島を越えて分布することもある。しかしそんな微小貝も、特殊な環境に適応したり微妙に生息環境を使い分けたりすることで、彼らは彼らなりに小規模ながらもダイナミックな多様化を遂げていることがわかってきた。


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