| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-M-376  (Poster presentation)

森林衰退が進行する大台ケ原の針葉樹林における林冠木の生残,成長,幹の剥被害

*木佐貫博光(三重大学大学院), 大嶽若緒(三重大学)

大型草食動物とりわけニホンジカの頭数密度が高い森林において,高木の樹皮および林床植生の摂食を防ぐために,柵が設置されることがある.植生保護における柵の効果を示す報告は少なくない.ところが,草食動物の除去によって,林床をササなどの繁殖力の高い種が優占する場合もみられる.そのような場合,樹木の更新が困難になることが危惧される.本研究では,防鹿柵の設置によって林床をササが覆った場所において,柵などの対処が,高木の生存と成長に与える効果を解明することを目的とした.奈良県上北山村の大台ヶ原東部に位置する正木峠の衰退林に2001年に設置された防鹿柵の内外において,トウヒなど林冠木を対象に生残,成長,剝皮の状況を調査した.林冠木は,DBH>10cmで林冠層に達している個体とした.2006年に防鹿柵の内外の約2haに生育するトウヒ林冠木を対象に,DBHを測定し,剝皮の有無,ラス(剥皮防止ネット)の有無,林床微地形を記録した.また,柵の内外においてミヤコザサの稈高を2002年から測定した.トウヒ以外の樹種について,2007年から2013年にトウヒ林冠木と同様の測定を行った.2015年と翌年,これらの林冠木を対象に生死の確認を行い,DBHおよび剝皮の程度を再測定した.枯死個体については枯死状態(立枯れ,折れ,根返り)を記録した.林床については,柵内では,柵の設置直後からササ稈高が急速に上昇した.柵外でもシカの頭数管理の影響からササ稈高が徐々に上昇した.発表では,トウヒ林冠木および他種林冠木の死亡率,直径成長,死亡要因を柵の内外で比較する.また,生残と直径成長に影響を及ぼす要因の解析から,今後行うべき対策について提言する.


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