| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-N-400  (Poster presentation)

多雪地域落葉広葉樹林における土壌水動態の季節変動

*小野賢二(国立研究開発法人森林総合研究所東北支所), 藤井一至(国立研究開発法人森林総合研究所), 安田幸生(国立研究開発法人森林総合研究所)

落葉や土壌有機物の分解を経て生成される溶存態有機炭素(DOC)は降水を通して土壌に供給される。森林生態系におけるDOC動態はリター分解や腐植生成等の土壌生成過程や、微生物による炭素や養分等の物質循環と密接に関わっており。定量的な理解が不可欠である。本研究では、多雪地域の落葉広葉樹林におけるDOC生成量の季節変動を明らかにするため、岩手県八幡平市安比高原ブナ林においてA0層、A層、B層(30cm深)下にパンライシメータを設置し、2011年7月~13年11月に月1回、土壌通過水を採取し、DOC動態を解析した。積雪期間は土壌通過水の採取は行わず、融雪直後に試料採取した。採取した土壌通過水のpHはA0層で6前後とやや高く、A層、B層は酸性(5前後)で変動した。ECは10~60 µS/cmで変動したが、その変動に傾向はなかった。ECの変動幅はA0層で特に大きかった。土壌通過水のDOC濃度は、総じてA0層で最も高く(2.5~25.0 mg/L)、次いでA層(0.7~12.6 mg/L)、B層(0.1~1.2 mg/L)と、無機化・吸着によって下層になるにつれて低下した。DOC濃度は地温が上昇し始め、微生物活性が高まる6月上旬より増加し、8~9月に20 mg/L以上の値を示してピークを迎え、落葉期にかけて高濃度であった。冬期においては微生物活性の低下と大量の融雪水による希釈によってDOCは低濃度を示した。本発表では、合わせて分析を行った無機態炭素ICと溶存態無機窒素DINの動態についても解析結果を紹介する。さらに、水収支とともにDOCフラックスも計算して報告する予定である。


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