| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-N-413  (Poster presentation)

北海道東部の潟湖における有機炭素貯留特性

*渡辺謙太(港湾空港技術研究所), 清家弘治(東京大学大気海洋研究所), 安達寛((株)ジオアクト), 柴沼成一郎((有)シーベック), 長坂洋光((株)いであ), 所立樹(港湾空港技術研究所), 田多一史(港湾空港技術研究所, 中電技術コンサルタント(株)), 門谷茂(北海道大学), 桑江朝比呂(港湾空港技術研究所)

海草藻場は最も基礎生産の高い生態系の一つであり,炭素の貯留場として重要な働きをしていることが明らかとなっている.バイオマスが重要な陸上の森林とは異なり,海草藻場では主として堆積物中に有機炭素が蓄積され,数千年スケールで貯留される.海草藻場では海草自身の生産に由来する有機物だけでなく,系外から流入する有機物(陸域由来有機物や微細藻類など)も補足されており,多様な有機物源が存在している.有機炭素の貯留量および埋没速度については,全球的な推計が行われているが亜寒帯域での知見は限られている.本研究では,海草の自生が確認されている北海道東部の風蓮湖および火散布沼において堆積物コアを採取し,有機炭素の貯留特性を評価した.放射性炭素による年代測定の結果,風蓮湖における体積速度は年間0.21–0.78 mm yr−1,表層30 cmまでの有機炭素貯留量は2147–3212 g-C m−2,有機炭素埋没速度は22–67 kg-C ha−1 yr−1であった.これらの値は日本沿岸やバルト海の海草藻場(Zostera marina)における推定値と同程度であったが,研究例の多い地中海の海草藻場(Posidonia oceanica)に比べると非常に小さかった.炭素安定同位体比の結果から,海草に加えて陸域由来および海由来有機物の寄与があり,これらの寄与率は場所および時間によって大きく変化した.北海道東部は周期的な地殻変動で海水準が変動しているため,炭素の貯留特性が時間的に変化していた可能性が示唆される.


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