| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-O-422  (Poster presentation)

オオバコ種子は捕食者の存在を何で知るか?~排泄物は危険の知らせ~

*山尾僚(弘前大学・農学生命科学部), 向井裕美(森林総合研究所・昆虫管理領域)

 植物は、動物との食うー食われる関係の中で、植食者からの被食に対する隠蔽や逃避、抵抗性などの様々な防御を進化させてきた。しかし一方で、未成熟な胚(種子)や発芽間もない幼根が如何にして被食を免れるのかについては殆ど明らかにされていない。本発表で我々は、種子が植食者の排泄物を識別し、被食リスクに応じて発芽タイミングを可塑的に変更するという、発生初期段階における植物の被食回避を報告する。
 種子散布能力が然程高くない植物種では、種子の多くが親株や同種他株が存在する付近に分散される。地表には多様な植食者が存在し、様々な植物を食べては排泄を繰り返している。組織がやわらかく防御形質も未発達である発芽直後の芽生えは、特に好んで被食されると予想される。このような条件下では、種子は植食者の排泄物から同種植物の被食状況を識別し、発芽タイミングを変更することが適応的である、と我々は考えた。この仮説について、オオバコ(Plantago asiatica)の種子と、その芽生えを摂食するオカダンゴムシとワラジムシを用いて検証した。オカダンゴムシやワラジムシがオオバコ以外の葉を摂食したときの排泄物と共に播種されたオオバコ種子は、単独で播種された場合と同じタイミングで発芽した。しかし、オカダンゴムシやワラジムシがオオバコの葉を摂食したときの排泄物と共に播種すると、顕著に発芽率が低下し、発芽までのタイミングが遅延することが明らかとなった。これらの結果は、植物の種子が植食者の排泄物から被食リスクを識別し、発芽タイミングを変更することで被食を回避していることを示唆する。


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