| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-O-424  (Poster presentation)

ブナ実生の資源分配と菌根共生に微環境が与える影響

*赤路康朗(岡山大学大学院 環境生命科学研究科), 山田和弘(岡山大学 農学部), 廣部宗(岡山大学大学院 環境生命科学研究科), 谷口武士(鳥取大学 乾燥地研究センター), 宮崎祐子(岡山大学大学院 環境生命科学研究科), 坂本圭児(岡山大学大学院 環境生命科学研究科)

森林林床は一般に光が乏しく、樹木実生の成長には光環境が主な制限要因であるとされる。しかし、土壌の環境が実生成長の制限要因となる可能性も報告されており、林床の環境条件と実生成長の関係は光環境と土壌環境両者の影響を同時に考える必要がある。さらに自然条件下では他個体との競争も実生成長の制限要因であり、特にササが下層植生を優占する場合は、地上部の光とともに地下部の養分・水分についてもササによる樹木実生への成長阻害が存在する可能性がある。そこで本研究では、光環境、土壌環境、およびササとの地下部における競争が2年生と4年生のブナ実生の成長に与える影響を明らかにすることを目的とした。岡山県若杉ブナ天然林において、2年生実生を19個体、4年生実生を11個体採取して乾燥重量を測定し、一部の採取個体では菌根形態を観察した。また、実生採取地点において土壌環境として土壌含水率とpHを、光環境として展葉期の相対光量子束密度(rPPFD)を測定した。ブナ実生の平均乾燥重量は2年生に比べ4年生は約3倍であったが、TR比(地上部乾燥重量⁄地下部乾燥重量)に齢集団間で違いはなかった。一般化線形モデル解析から、2年生実生は土壌含水率が高いほど乾燥重量が大きく、TR比が小さくなること、および4年生実生は含水率とrPPFDの値が高いほど乾燥重量が大きく、TR比が大きくなることがわかった。これらから、ブナ実生は個体サイズが小さい若齢期には土壌環境の影響を相対的に強く受け、成長可能な場合は物理的支持や土壌の養分・水分獲得のため地下部バイオマスに優先的に分配すること、また、その後は光環境の影響を相対的に強く受け、成長可能な場合はさらに光を得るため地上部バイオマスに優先的に分配することが示唆された。本研究ではさらに、ササの地下部とブナ実生の菌根の解析も含めて、ブナ実生の成長様式を明らかにする。


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