| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-R-482  (Poster presentation)

モンゴル・ホスタイ山脈における開花構造の季節変動および年変動

*甲山哲生(北海道大学), 鬼澤康太(北海道大学), 石井博(富山大学), 工藤岳(北海道大学)

植物群集の花形質の多様性や開花構造は、花粉媒介者(ポリネーター)の組成に大きく影響されると考えられる。北半球の中緯度山岳生態系において、特に重要なポリネーターはハナバチ類とハエ類である。ハナバチ類はハエ類に比べ、定花性が強く、植物にとって信頼性の高いポリネーターある。一方、ハナバチ類に送粉される植物種間ではポリネーターを巡る競争が生じ易く、花形質や開花パタンへの選択圧が強いと考えられる。そのため、ハナバチ類への依存度が高い群集では、ポリネーター獲得競争の回避のため、群集構成種間の開花重複が減少することが予測される。
 本研究では、ハナバチ類への依存度が相対的に高い中央アジアの高原地帯において、群集スケールでの開花構造を明らかにすることを目的とし、モンゴル中央部のホスタイ山脈国立公園にて、2015年と2016年に、虫媒花植物の開花フェノロジーおよびポリネーターの季節活性の調査を行った。2015年は、7月上旬までの降水量が例年と比べ極端に少なく、シーズンを通して乾燥の影響が強くみられた。一方、2016年の降水量は例年並みであった。
 野外調査から以下の点が明らかとなった。(1)ホスタイ山脈国立公園の高原生態系では、日本の山岳生態系と比べ、ハナバチ類による訪花頻度が高い。シーズン前期は、特に単独性ハナバチ類による訪花量が多く、シーズンが進むに連れハエ類およびチョウ類の訪花量が増加する傾向にあった。また、シーズン後期にはマルハナバチ類の訪花量が増加した。(2)降水量が開花量の強い制限要因となっており、乾燥による開花量の減少がポリネーター(特にマルハナバチ類)の季節活性にも影響する。(3)開花植物種の構成は、短い時間スケールで明瞭に入れ替わっていた。2015年は乾燥の影響により開花時期が全体的にシーズン後半にずれ込んでいたものの、2016年と比較して開花時期が大きく変動した種はほとんどいなかった。


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