| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-05  (Poster presentation)

変形菌の「自他」の研究   変形体の自己拡張的自他認識力

*増井真那(東京都立小石川中等教育学校)

5歳の時から変形菌の変形体の採集、複数種の長期培養と継代培養、実験と研究に取り組んで10年になる。2008年からは変形体が他の個体と出合う時の反応に注目し、2013年からは変形体の自他認識力の探求を続け、これまでに2つの結論を得た。第1に、変形体には自他を見分ける力がある。別種は避け合い、同種は融合できるが、同種産地違いでは避け合う場合、融合できない組み合わせも存在した。このことから、変形体は自他を見分ける力を持つと結論した。第2に、この判断には変形体を包む粘液鞘が関係している。粘液鞘単体と個体を出合わせると、個体どうしの場合の反応と一致したことから、変形体は粘液鞘を自他の判断対象としていると結論した。今回はこの継続研究として、まだ明らかではない「変形体の自他認識力と融合力の関係と意味」を明らかにすることについて取り組んだ。この目的のために、株の間の関係や行動パターンを明らかにする3つの実験を行った。イタモジホコリ Physarum rigidum 変形体の同種産地違い5株の総当たり10組について、変形体に自由に自他認識をさせる【自由融合実験】と、自他認識をさせず人の手で2個体を混ぜる【強制融合実験】を行い、さらにそこでできた統合個体と元の株の間で自他認識をさせる【判別実験】を行った。この3実験の分析結果から、変形体の自他認識力の特徴とその融合に関する利点が見えてきた。第1に、変形体は相手の細胞膜に直接触れなくても粘液鞘に触れることにより自他認識ができる。この非接触型自他認識は距離の遠さに関係なく早く判断できるので、融合時の危険回避に有利であると言える。第2に、変形体は、相手と複数の遭遇場所で自他判断を独立並行的に行うこともできる。この分散並列的自他認識は全遭遇機会を独立に判断し直し、稀少な融合機会を得ることに役立つと言える。


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