| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-26  (Poster presentation)

動物園におけるオランウータンの社会的行動

*黒田峻平, 川上礼志郎, 本田豊(海城中学高等学校)

 近年,絶滅が懸念されているボルネオオランウータン(Pongo Pygmaeus,以下オランウータン)を保護する事業が現地で展開されており,1000頭近くの個体が保護されている.しかし,現状として野生復帰が滞っており,多くの個体が施設で飼育されたままとなっている(久世 2014).そのため,オランウータンの飼育施設での行動特性を明らかにすることで,保護施設における環境エンリッチメントの向上に繋がればと考えている.
 野生下のオランウータンは活動時間の内47%を「採食」に割いている(金森 2013).一方,2016年に私たちが多摩動物公園において行った調査で,オランウータンの行動を「採食」「移動」「休息」「その他」に分類し,それぞれの時間の割合を調べたところ,「採食」の時間は13%と短かった.そして野生下より「その他」の時間が増えていた.年齢によって割合を比較した結果,若い個体(ワカモノ以下)の方が年をとった個体(オトナ)より「その他」が多く,遊び(他個体との交流や玩具利用)の時間が長い可能性が考えられた.
そこで,本研究では,年齢による他個体との交流や玩具利用による一人遊びの時間やその内容を明らかにするため,若い個体の方が年をとった個体より遊びの時間が長く多様である,という仮説をたてて調査を行った.調査は東京動物園協会の多摩動物公園において2017年1月から3月まで計11回,9:45~16:45まで行った.アカンボウ2頭,コドモ1頭,ワカモノ1頭,オトナメス5頭,フランジオス2頭の合計11頭を調査対象とし,オランウータンが利用している玩具とその利用時間,オランウータンが交流している相手と内容(じゃれる,グルーミングなど)及びその継続時間を記録した.
 年齢の違いによって交流時間やその内容に差が生じていた.こうした社会的行動の年齢による違いについて考察する.また,オランウータンが好む玩具についても考察し,オランウータンに適した環境エンリッチメントについても発表する予定である.


日本生態学会