| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-50  (Poster presentation)

尾瀬国立公園大清水湿原の復元に向けて

*齋藤剛, 永井愛美(群馬県立尾瀬高等学校)

 尾瀬国立公園の大清水湿原はミズバショウの群落が有名な場所であったが、2011年頃に激減し、それに伴い観光客も減少、地元の関係者が困惑している。私たちは大清水湿原でミズバショウの生態やその移植方法などを調べ、湿原の復元に向け協力できないかと考えた。
 専門家や地元企業と連携し、過去の大清水湿原について調べたり、ミズバショウの移植方法などについて検討を重ねた。その結果、移植する際には地下水位がゼロで流水沿いの場所、河川の氾濫域や合流域にある堆積地、開花時期に十分な陽光があるが開花終了後は半日陰になる場所、ヤチダモなどの木の根がなく、スゲが繁茂している場所に詰めるように移植することが肝心だとわかり、これらを考慮し、2016年4月20日に生徒と関係者らで1000株を移植し、動物の進入防止ネットも張った。さらに、10月28日に秋植えとして500株を移植した。苗は片品村内で育苗したものを使用した。移植後には定点カメラを設置し、さらに湿原に月1回程度行き、湿原やミズバショウの状態を調べた。
 4月に移植したミズバショウは5月25日に根の部分が活着したことを確認したが、6月10日頃までの間に葉が動物に食べられ、根ごと引き抜かれ、皆無となっていた。また、被害を受けたミズバショウの近くにニホンジカの足跡を発見した。定点カメラを確認したところ、画像にはシカがミズバショウの葉を食べている様子が撮影されていた。さらに、9月14日にはネットの弛みから動物が進入した跡を発見、獣道も確認した。
 結果から移植したミズバショウの活着を確認したが、動物が湿原に進入し、食い荒らしたことを確認した。しかし、シカはミズバショウの葉を食べ、根を食べないと聞いたため、根ごと引き抜いたのは他の動物の可能性もあると考えた。大清水湿原の復元に向けて動物によるミズバショウの被害を減らすことが肝心だとわかった。


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