| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


シンポジウム S04-3  (Lecture in Symposium)

PALSAR-2を用いた熱帯泥炭林における土地被覆変化域および森林火災域の検出

*林真智(宇宙航空研究開発機構), 本岡毅(宇宙航空研究開発機構), 段理紗子(リモート・センシング技術センター), 伊藤拓弥(リモート・センシング技術センター), 島田政信(東京電機大学, 宇宙航空研究開発機構)

ボルネオ島は生物多様性の極めて高い貴重な地域である一方、森林火災やプランテーション開発等により急速に森林が失われつつあり、特にインドネシアは世界で2番目の森林減少国となっている。急激に変化するボルネオ島の森林動態の定期的な把握が必要とされるが、それには衛星観測の利用が有効である。中でもALOS-2衛星に搭載されている合成開口レーダPALSAR-2は、雲を透過するマイクロ波を利用するため雨季でも観測可能であり、最大で年間9回の頻度で分解能50mの画像を取得できるため、森林動態を監視する目的に適している。本研究は、このPALSAR-2をボルネオ島の森林変化、特に火災による変化域の検出に利用する手法の開発を目的とした。対象地域は、中央カリマンタン州の熱帯泥炭林とした。従来の研究では、HV偏波(水平偏波送信/垂直偏波受信)のマイクロ波の後方散乱が減少する箇所を森林減少として検出する手法が多く用いられてきた。しかし本研究の対象地域では、森林火災域でのHV偏波の顕著な変化が見られなかった。一方、HH偏波(水平偏波送受信)の後方散乱が著しく増加する傾向が見られた。これは、森林火災により樹冠部が失われたことでマイクロ波の散乱過程が変化し、HH偏波の後方散乱が増加した一方、樹幹は燃え残っていることでHV偏波の散乱過程には大きな変化がなかったためと推測される。このようなHH偏波の変化傾向を利用し、2015年の森林火災による森林減少域のマッピングを試みた。2016年1月の観測画像に対し、過去1年間の観測値を大幅に上回る箇所を森林火災域として特定したところ、別途、Landsat衛星画像から目視判読した森林火災域と良く一致した。本研究により、PALSAR-2を利用することで森林火災の被害域を定期的かつ広範囲に把握できることが示され、今後、熱帯地域での土地被覆の動態監視への利活用が期待される。


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