| 要旨トップ | ESJ64 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


シンポジウム S09  3月16日 9:00-12:00 A会場

Ecological Epidemiology:Eco-Epi modeling and data analysis

岩見真吾 九州大学大学院理学研究院・生物科学部門

HIVやSARS、新型インフルエンザ等が出現し、瞬く間に全世界に広がり、感染症の時代を迎えた。医療体制や防疫体制も整った2014年でさえ、西アフリカはエボラ禍に見舞われ、日本ではデング熱が流行し始めている。南米を中心に流行したジカ熱はオリンピックの開催と相まって、世界中に大きな不安を与え、感染症は人類の築き上げてきた文化にも危機的な状況を与える事を目の当たりにさせた。これらの新興・再興感染症に対しては、ワクチンはおろか、その治療法も存在しない。私達に残された手段は、表面的な症状の消失あるいは緩和を目的とする対処療法のみとなっている。今後、これら感染症の流行を阻止し、制御するために重要な課題の一つは、それらの「定量・予測」である。そして、定量や予測を行う為にはウイルス流行や進化を記述する数理モデルやコンピュータシミュレーションが希求されている。もちろん、現在までいわゆる“理論疫学”という分野は活発に研究され、国の疫病対策に多大な貢献をしてきた。しかし、近年流行している感染症の多くは、昆虫媒介性であったり、人獣共通であったりという側面を持っている。高度に発展した人の文明は気候を変動させ、人口爆発に伴う都市化は一昔前では考えられなかった動植物や昆虫とヒトとの接触をもたらし、予想しなかった感染症の流行を助長させている。この様な感染症の流行メカニズムを理解するためには、昆虫や動物の生態を理解し、その知見を疫学分野にフィードバックする必要がある。本生態学会ではこの様な国内外の現状を受けて、特に、昆虫・動物と人のインターフェイスにある感染症を対象としたシンポジウムを企画する。私達は、この様な研究領域を"Ecological Epidemiology"、略して「えこえぴ」と名付け、新しい境界領域分野として日本でも積極的に展開していこうと考えている。

[S09-1] Initiation of "ECO-EPI" 岩見真吾(九州大学大学院理学研究院・生物科学部門)

[S09-2] Ecology and control of mosquito borne diseases in Africa 皆川昇(長崎大学・熱帯医学研究所)

[S09-3] Anomalous rainfall in August is a driving force behind malaria spread in Limpopo province 布野孝明(九州大学大学院・システム生命科学府)

[S09-4] Wavelet analysis implies a link between climate phenomena and malaria incidence in South Africa Marko JUSUP(北海道大学・電子科学研究所)

[S09-5] Experimental-phylogenetic investigation on HIV-1 heterogeneity during adaptive/evolutionary process to human population 佐藤佳(京都大学・ウイルス再生医科学研究所)

[S09-6] "Eco-Epidemiology”- Past, Present and Future Mark Wilson(ミシガン大学・公衆衛生学大学院)


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