| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


シンポジウム S12-6  (Lecture in Symposium)

つながる微生物の不思議: 争うよりも共に生きることで見えてくる世界

*成澤才彦(茨城大学農学部)

エンドファイト(endophyte)とは、endo=withinとphyte=plantの合成語で、生きている植物体の組織や細胞内で生活する生物を示す。この生物には、細菌類、菌類からヤドリギに代表される寄生植物まで含まれる。生物を菌類に限定しても、コケ、シダ、地衣類や、草本植物、木本植物にわたる多くの植物種の根、葉、茎、および幹等、様々な部位をすみかとする。生活史の上で、そのすべて、あるいは一部でも植物内で生活していれば、エンドファイトと定義できる。
このエンドファイトと植物の関係およびその利用についての研究例は多く認められるが、細菌類との相互作用に関しては、殆ど知られていない。当研究グループでは、鹿児島県屋久島からVeronaeopsis simplex Y34および茨城県阿見町よりV. simplex IBA K45の2菌株を分離した。これらの菌類の菌糸には、複数種の細菌類が付着していたため、同菌を供試して細菌類との相互作用解明を試みている。例えば、V. simplex Y34では、菌糸表面の細菌を除去することで、宿主菌類の植物への生育促進効果および病害抑制効果が減少することが報告されている。その構成種は、Pseudomonas属細菌、Paenibacillus属細菌、Stenotrophomonas属細菌、Delftia属細菌およびRhizobium属細菌が確認されている。中でも、Rhizobium 属細菌(Rhizobium sp. Y9)はV. simplex Y34と強固な相互関係にあることが考えられた。本講演では、当研究グループで行われている研究例を紹介し、単独生物に注目するのではなく、植物-エンドファイト-細菌を1つの系としてとらえ、その相互作用や生態を学ぶことで見えてくる世界に関して議論したい


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