| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


シンポジウム S14-6  (Lecture in Symposium)

生物多様性保全から考える鳥獣対策の課題

*江成広斗(山形大学)

「鳥獣害」は生物多様性がもたらす負の生態系サービスとも指摘される。人口減少時代を迎えた日本において、野生動物の分布拡大はさらに勢いを増し、鳥獣害への対応は喫緊の国策課題となりつつある。こうした状況を受け、鳥獣の管理強化を主目的に、鳥獣保護法は鳥獣保護管理法へと一昨年改正された。同法は生物多様性条約の国内対応法の一つであり、近年の法改正で「生物の多様性の確保(2002年)」や「鳥獣保護区における保全事業(2006年)」が新たな項目として追記されている。しかし、鳥獣害をもたらす野生動物については人間社会への利害関係を軸に対応策が展開されることが一般的で、生物多様性保全への配慮は十分とは言い難い。その結果、既存個体群の生存が保証される範囲であれば、被害の抑制・予防(ゼロリスク)のために加害動物の分布を可能な限り排除しようとする市民や行政の声は少なくない。本発表では、こうした鳥獣行政の現況を解説し、「人口減少」をキーワードに今後生じうる野生動物管理上の新たな問題を提示したうえで、今後取り組むべき課題について整理していきたい。


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