| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


企画集会 T01-3  (Lecture in Workshop)

里山の鷹‐サシバを誘致する

*東淳樹(岩手大学/農学部)

近年、里地里山の減少と質的な劣化に伴いサシバの生息数は激減してきており、保全上の対策が急がれている。繁殖地における本種の行動時間の多くは採食行動に費やされており、その環境については、採食地点の草丈が低く、止まり木の存在が重要であることが明らかになっている。こうした環境は人為的に創出することが可能である。そこで、非耕作水田への止まり木としての杭の設置および草刈りを行うことで人為的に狩場環境を創出し、その保全的効果を検証した。2008年と2009年の2年にわたり定点観察法による行動観察を行い、すでに本種の空間的な利用実態が明らかとなっている、岩手県花巻市における本種の繁殖地を調査地とし、また、本種の採食利用頻度の低い非耕作水田を実験地としてAとBを選定した。Aは2008年に本種の行動圏内に含まれたのに対し、Bは利用が確認されなかった。AとBの概算面積および設置した杭の本数はそれぞれA(20a;6本)、B(70a;14本)である。本種の育雛期間中、草丈が20cmを超えないように随時草刈りをし、育雛期に定点観察法に基づく行動観察調査を行い、本種の実験地の利用実態を把握した。その結果、2008年と2009年はともに電柱が採食時の止まり木として高頻度に利用されたが、2010年は設置した杭の利用割合が約40%あり、それに伴い電柱の割合が低下した。また、2008年と2009年では、実験地周辺はほとんど採食に利用されなかったが、2010年は実験地周辺での採食利用頻度が高くなり、杭の設置および草刈りの効果と考えられた。しかし、実験地Bでは採食行動は1度も観察されず、保全策実施の効果は認められなかった。これは、実験地Bは前年までの行動圏内に含まれておらず、利用される確率がもともと低かったこと、また、実験地Bの周辺に営巣していたノスリとの種間競合が生じていた可能性が考えられた。


日本生態学会