| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


企画集会 T01-6  (Lecture in Workshop)

コメント:自然と共生する珠洲市を目指した取り組み

*宇都宮大輔(珠洲市)

 石川県珠洲市では、2006年から金沢大学が拠点を置き、里山里海をテーマに人材育成や生物多様性保全の取組みを始めている。金沢大学の活動をきっかけに、里山里海の保全や持続的な活用を目指したNPO法人が地元の有志によって立ち上げられた。また、行政では自然環境に関する施策を推進するための部署として自然共生室が設置された。現在は、金沢大学、NPO、珠洲市という3つの組織が、珠洲市の生物多様性を守り、活かしていく取り組みの中核となっている。
 珠洲市の生物多様性の一つの特徴は、ため池や水田などを含む水田生態系に支えられた水生昆虫相である。珠洲市の水田地帯に生じている様々な変化は、希少な大型ゲンゴロウやカメムシ目を含む水生昆虫の生息に影響を与えていると考えられる。これらの水生昆虫の多様性保全を目指し、金沢大学とNPOと珠洲市が連携し、水田環境の変化に伴う昆虫の反応などの基礎的な調査研究、生息環境の維持・整備、地元住民や農家の意識向上などに取り組んできた。
 今回は、これらの取組みの中から、調査研究結果をもとに地区住民と研究者が意見交換を重ねた圃場整備地区での取り組み、希少種保全を目的としたビオトープ造成の取り組み、身近な生物多様性に気付いてもらうために実施している小学生対象の環境学習の3事例からみえてきた成果や課題を紹介する。そこから、研究者が実際の農業や集落活動の現場に入り、生態学的な調査研究を生物多様性保全の活動につなげる時に、地元住民やNPO、行政とより良い連携を作り上げるための視点や可能性を考える。


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