| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


企画集会 T16-1  (Lecture in Workshop)

科/亜科レベルの食草嗜好性から広腰亜目の種多様化の要因をさぐる

*井坂友一(北海道大学・FSC), 佐藤利幸(信州大学・理)

地球上で記載されている昆虫類約100万種の約半数は植食性昆虫が占めている.例えば,植物と植食性昆虫の相互作用をとおした種多様化に着目した研究があげられるように,植物と植食性昆虫の関係は地球上の種多様性を理解するうえで重要なモデルケースとされている.ハチ目の中で祖先的な広腰亜目(ハバチ類)は現在15科約8600種が知られ,一部を除き植食性である.ハバチ類の各科/亜科の種数には偏りがあり,このことはハバチ類が利用する植物グループの範囲などの生態的進化的背景と関係があると考えられる.ハバチ類データベース(EcatSym 4.0 beta)を用いて,ハバチ種ごとに利用している植物の記録を収集し,ハバチ類の(1)各科/亜科の種数とそれらが利用する植物目数の関係,(2)各科/亜科が利用する植物の傾向を目レベルで明らかにした.さらに(3)種数の姉妹群比較法によりハバチ類の科間系統樹上で有意な種数の増減が起きた分岐を特定した.ハバチ類は8567種が記載されており,うち2087種に利用する植物の記録があった.全体を通してハバチ類に資源として利用されている植物の記録は2126種あり,その8割以上が被子植物であった.ハバチの各科/亜科の種数はそれらが資源として利用する植物の目数と正の相関があった.ハバチ類全体的にはバラ目とブナ目を高頻度で利用しているが,シダ植物や裸子植物を特異的に利用する科/亜科が存在した.種数の姉妹群比較の結果,ハバチ類の科間系統樹上で有意な種数の増減が4つの分岐で確認された.これは,ハバチ類の系統進化の中で,各科の種数に影響を与える生態的進化的な変化が4回あったことを意味している.ハバチ類の各科の種数は,特殊な生態的特徴を持つ場合やシダ植物を利用していると減少し,被子植物を利用していると増加する傾向があった.


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