| 要旨トップ | ESJ64 自由集会 一覧 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


自由集会 W27  3月17日 18:00-20:00 D会場

市民科学の社会的インパクトをどのように高めるか?~モニタリングサイト1000の10年間から見えた課題を例に~

高川晋一(日本自然保護協会)

 「市民科学」は、市民が科学的プロジェクトへの参画を通じて科学・社会課題・教育といった分野に貢献することを目指した取り組みである。日本の里山の生物多様性を100年観測することを目指した「モニタリングサイト1000里地調査」も代表的なプロジェクト一つである。これまでにのべ7万人の市民調査員が参加して120万件のデータを集めた結果、不明であった里山の動植物の全国傾向が初めて明らかとなりつつある。しかしその一方で、調査成果が政策や保全管理に十分活かされない、調査員の高齢化や固定化が深刻、調査成果以外の社会的成果が十分把握できていない、といった課題が生じている。これらの課題は、普及啓発やデータ収集を主目的とした他の多くの市民科学プロジェクトにも共通するものだ。市民科学の推進には様々な分野の研究者・学生、多様な関心・経験の市民、教育研究機関・博物館・自治体などの参加が不可欠であるが、それぞれが期待するメリットや社会的成果が異なっており、事業としての受益者設計や社会的インパクト評価が不十分であることが多い。
 本集会では、開始10年が経過したモニタリングサイト1000を題材として、事業の設計者、研究者、現場の調査員といった異なる立場から報告を行うとともに、調査員と一般市民との活動動機に関する社会心理学的な比較研究の報告を行う。それを踏まえて市民科学プロジェクトの社会的インパクトを高めるためにどのような主体との連携が必要か、主体ごとのニーズをどうプロジェクトに組み込むべきかについて、最後に会場全体を交えて分科会形式で議論を深める。

[W27-1] 市民科学の社会的インパクトを高めるために解決すべき課題 高川晋一(日本自然保護協会)

[W27-2] 大規模な市民調査プロジェクトのデータの可能性と、解析・評価・活用における課題 竹中明夫(国立環境研究所)

[W27-3] 現場サイドから求める、市民自身が調査成果を活用するために必要な科学的支援 森本信生(宍塚の自然と歴史の会)

[W27-4] 市民が保全活動を行うことによる社会教育効果とは 今井葉子(筑波大学)


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