| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-01  (Oral presentation)

捕食者巻貝が外来種キタアメリカフジツボの加入に与える非消費効果

*頼末武史(北大・FSC・厚岸), 百田恭輔(港空研), Julius, Ellrich A(StFX University)

キタアメリカフジツボ(以下、外来フジツボ)は北米西岸を原産とする潮間帯性のフジツボであり、国内では東北から道東に分布している。外来種の侵入、定着は、加入過程によって大きく影響される。近年、捕食者である肉食性巻貝の非消費型効果が、被食者であるフジツボの加入量に影響を与える事が報告されているが、移入地での本種に対する影響は未解明である。本研究では、捕食者の非消費型効果が本種の加入量に与える影響を明らかにする為、北海道大学厚岸臨海実験所の桟橋で野外実験を行った。
 実験地である道東太平洋岸の潮間帯では、在来種のキタイワフジツボ(以下、在来フジツボ)と捕食者巻貝のエゾチヂミボラ(以下、捕食者)が優占している。実験は2016年5月~9月に行い、潮間帯中部に実験ケージを設置した。ケージは塩ビパイプ(直径20 cm、高さ5 cm)とプラスチックネット(5 mmメッシュ)からなり、中央部に塩ビ製の加入板(8 cm x 5 cm)を取り付けた。縁辺部には捕食者5個体を入れた。中央部と縁辺部はネットで仕切り、捕食者が加入板へ到達できない構造にした。また、コントロールとして捕食者を入れないケージを用意した。実験後、加入板へのフジツボ類の加入個体数を計数した。
 在来フジツボの加入量は捕食者の非消費型効果によって減少したが、外来フジツボの加入量は変化しなかった。外来フジツボの加入時期は在来フジツボよりも遅い事が示唆されている為、外来フジツボの加入は、捕食者の在来ジツボの加入量への影響を介した間接効果を受けている可能性が有る。この仮説を検証する為、加入板上の裸地+外来フジツボ占有地面積に対する外来フジツボの標準化加入量を比較した。その結果、標準化加入量は捕食者の存在下で減少する事が明らかになった。このことは、外来フジツボの加入量が、捕食者の非消費型の直接効果と、在来フジツボを介した間接効果の影響を受けている事を示唆する。


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