| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-05  (Oral presentation)

竹箒が犯人だった!ムネアカハラビロカマキリなど中国産外来昆虫の移入経路解明へ

*苅部治紀(神奈川県博), 碓井徹(埼玉県動物研究会), 櫻井博(多摩動物公園), 松本和馬(八王子市), 加賀玲子(神奈川県博)

ムネアカハラビロカマキリHierodula sp. (以下本種)は、2010年の福井県敦賀市での記録を皮切りに、これまでに新潟から鹿児島までの各地から報告された外来のカマキリで、本種の原産地や侵入経路は不明とされている。
本種の国内における最古の記録は東京都八王子市の2000年のものとされているが、侵入地点から周囲に拡散していく多くの外来種の拡散様式と異なり、本種の場合は全国各地で同時多発的に確認されていることは特筆すべきである。本種が同属の在来種のハラビロカマキリH. patelliferaに対して顕著な侵略性があることは、愛知県豊田市の事例のほか、筆者らも神奈川県秦野市周辺の定着地でも同種が駆逐されていることを報告した。
また、調査の中では、その侵入経路にも関心をもってきた。その中で、本種のものと考えられる卵鞘が中国製の輸入竹箒に付着しているというインターネット上の情報を得て、調査を行った。
その結果、東京都日野市の多摩動物公園での継続的な調査では、調査した竹箒の約3%から本種の卵鞘が確認されたほか、神奈川県平塚市、埼玉県上尾市のホームセンター、八王子市の建築現場でも卵鞘のついた竹箒が確認された。また、これらの卵の一部を保管しておいたところ、孵化能力を持つことと、その幼虫の形態から本種であることが確認された。さらに、2017年に国内での定着が初めて報告された中国大陸原産の外来セミであるタケオオツクツクPlatylomia pieliについても、中国製の竹箒からこのセミのものと思われる産卵痕が確認された。
これらのことから、現在国内各地から記録されるようになった本種は中国製の竹箒がその移入経路と考えると、各地で同時多発的に報告が見られることの合理的な説明がつくと同時に、輸入竹箒がさらに多くの新たな外来種侵入の要因となり得る可能性があるため、輸入時の燻蒸を義務づけるなどの早急な規制が必要なことを指摘しておく。本講演では、現在までに判明した知見を報告する。


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