| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-06  (Oral presentation)

外来種ツマアカスズメバチが対馬在来スズメバチ類に与える空間構造を考慮した影響評価

*池上真木彦, 岸茂樹, 五箇公一(国立環境研究所)

拡大初期の外来種が在来生物に与える影響を評価する事は、防除に先立つリスク評価の一環として重要である。しかし、拡大初期の外来種は侵入地点周辺に偏った分布を示すため、各地点で捕獲された個体数が(1)侵入してからの時間、(2)環境、そして(3)種間関係のどれに起因しているか区別する事は難しく、外来種のリスク評価と対策を遅延させる要因となっている。本研究は対馬全島に満遍なく設置した誘引ベイトトラップによって捕獲されたスズメバチ属 (Vespa) 6種のワーカー数データを使用し、Moran Eigen Maps(MEM)により環境そして個体数両方の空間的自己相関を考慮した上で種間相互作用の解析を行い、外来生物ツマアカスズメバチが対馬在来のスズメバチ類に与える影響を評価するものである。
各トラップ間における捕獲数の空間的自己相関を調べた所、ツマアカスズメバチの捕獲数は近距離では強い正の相関が、遠距離では負の相関が見られた。一方在来種では近い距離において正の自己相関が確認されたが、負の相関はみられなかった。これはツマアカスズメバチは本種が侵入したと思われる地域を中心に分布している一方、在来種は地域的に個体数の大小があっても全島に分布することを示している。次に冗長性分析(RDA)により気候、土地利用そして空間的自己相関の影響を除去してスズメバチ個体数の種間の相関を解析したところ、スズメバチ各種の捕獲数の間には強い負の相関がある事が示された。対馬においてツマアカスズメバチの分布が拡大している事から、これはツマアカスズメバチが他種に対して負の影響を与えている事を示唆しており、本種が他の在来スズメバチ類に与える負の影響は自然環境下でも甚大であると考えられる。


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