| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) D02-05  (Oral presentation)

観測間隔に影響されない材生産速度の推定方法

*甲山隆司(北海道大学), Douglas Sheil(ノルウェー生命科学大)

 森林の現地調査では、調査区を設営して、出現する樹木個体の位置、樹種、幹直径などを測定する。調査区の樹木サイズの繰り返し測定と個体現存量推定手法を用いることにより、現存量の(成長と新規加入による)材生産速度と、(枯死による)材消失速度が推定できる。観測間隔を長くすると測定誤差は減少するが、その一方、観測間隔に依存する別の問題が生じる。すなわち、期間中に生き残った個体の現存量成長と新規加入による増加を間隔で割った生産速度の推定値は、観測間隔が長くなるにつれて、期間中に死亡する個体の生産が記録されないため、過小推定となる。
 私たちは、観測間隔に影響されない、材生産・損失速度のふた組の推定法(瞬間速度・年間速度)を提案する。従来の推定法による生産速度と消失速度の観測間隔 T (年)に依存する過小評価率は、それぞれ[相対消失速度×T/2]と[相対生産速度×T/2]によって近似できる。
 同一種内においても、成長の遅い樹木個体は死亡率が高いことが一般的に観察される。こうした成長と生存の関係は、私たちが提案する材生産・消失速度推定値に影響を与えないことを示す。
 自然林は、現存量回転率が異なる亜集団(種や立地など)に属する樹木によって形成されている。この異質性は、亜集団構造を無視した森林レベルの生産・消失速度の推定にバイアスをもたらす。そのため、亜集団毎に現存量の生産・消失速度を推定する必要がある。


日本生態学会