| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) D02-10  (Oral presentation)

太陽光誘発クロロフィル蛍光から見る個葉での光合成量

*酒井佑槙(北海道大学), 加藤知道(北海道大学), 辻本克斗(東北大学), 小林秀樹(海洋研究開発気候), 奈佐原顕郎(筑波大学), 秋津朋子(筑波大学), 村山昌平(産業技術総合研究所), 野田響(国立環境研究所), 村岡裕由(岐阜大学)

陸域生態系は光合成により、温室効果ガスである二酸化炭素を大気から吸収しており、光合成量の時空間分布を正確に把握することは、将来の地球の気候変化を予測する上で非常に重要である。葉によって吸収された光の大部分は光合成に利用されるが、利用されなかった光エネルギーの一部は、クロロフィル蛍光として放出される。最近では生態系の大きなスケールにおいて、地上タワー観測や衛星観測(GOSAT, GOME-2)により、太陽光に誘発されたクロロフィル蛍光(Sun-Induced Fluorescence:SIF) と生態系光合成量(Gross primary production:GPP)との関係が大変強いことがわかってきている。また、SIFは、従来の植生指標(NDVI等)では困難であった冬期の常緑林や、生長後期の作物の光合成活性も正確に評価できるため、普遍的な指標として生態系光合成量の推定に生かすことが期待されている。
このようにSIFの利用可能性は高まり、衛星観測が計画され、地上観測データも着々と蓄積されつつある。しかし一方で、この観測されたSIFによる生態系光合成機能の理解や、データ同化手法などによる生態系光合成量の 推定精度の向上を図るための基礎的なシミュレーションモデルの開発が遅れている。
葉によって吸収された太陽光の大部分はクロロフィルにおいて光合成(光化学)に用いられる形へ変換される。そして、残りは蛍光や熱などへと変換され大気に放出される。これまでの研究の多くは、採取した葉に光を照射することによって測定された値を用いることで速度係数を決定し計算を行ってきた。しかし、野外で観測されたデータを用いたパラメータ値の推定が行われていないため、自然界における日単位や季節単位での環境変化に対する蛍光の放射量変化を求めることはできていない。
そこで本研究では蛍光・光合成・熱放散等のエネルギー分配を推定する基礎的なモデルを開発し、高山市TKYサイトでの検証を行った。


日本生態学会