| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) F02-08  (Oral presentation)

近縁種の求愛拒否音声を真似ることで交雑を防ぐナゴヤダルマガエル

*伊藤真(京都大学大学院)

カエル類が繁殖の際に音声を用いていることはよく知られているが、これはすべてオスの鳴き声であり、一般的にメスは鳴かないとされる。しかし、ごく一部の種ではメスも鳴き声を発しており、これらの種ではメスの鳴き声を利用した特殊な繁殖様式を持っていることが報告されてきた。近年、日本に生息するトノサマガエル属のカエルであるトノサマガエル(以下トノサマ)とナゴヤダルマガエル(以下ダルマ)においてメスが繁殖期に鳴いていることが報告された。トノサマにおいては、メスの鳴き声は卵を持たないメス個体が求愛を拒絶するために出していることが昨年度の生態学会において報告された。本研究では、ダルマにおいてメスの鳴き声がどのような機能を持つのか、トノサマとどのように異なるのかを雌雄対面実験による行動観察によって明らかにした。まず、ペアオスの種による鳴き声回数の違いを調べたところ、ダルマのメスは同種オスとペアにした際にはあまり鳴き声を発さないが、トノサマのオスとペアにした際には多くの鳴き声を出すことが明らかになった。一方、トノサマのメスはダルマのオスとのペア時には鳴き声をほとんど発さないことから、異種間での積極的な鳴き声の使用はダルマ特有のものであることが明らかとなった。メスの鳴き声の各成分を種間で比較したところ、聞き分けられるほどの差は検出されなかった。トノサマのオスにおけるダルマのメスの鳴き声に対する反応を調べたところ、トノサマのメスの鳴き声に対する反応と同様に避けるように反応していることが明らかとなった。以上のことから、ダルマのメスはトノサマのメスの求愛拒否音声と似た鳴き声を出すことで、トノサマのオスから受ける異種間求愛を回避していることが示唆された。


日本生態学会