| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-02  (Oral presentation)

イラクサにおける継代防衛誘導:2世代目の刺毛形質

*加藤禎孝(奈良教育大学), 石田清(弘前大学)

多年生草本イラクサの親世代で茎頂切除個体に現れた誘導防御形質である刺毛形質の継代防衛誘導の実態と適応的意義を明らかにすることを目的とした。このため、切除処理を行った親世代由来のF2世代の果実を用いて栽培実験を行った。
茎頂切除処理の方法:2013年奈良公園内のフェンスで囲まれたニホンジカの採食圧に低い竹林内に調査区を設定した。調査区内のイラクサ個体を3つのグループに分け、切除処理を行った。切除区分(1)2013年春と2014年春に切除(連続して2回切除)(2)2013年春に1回のみ切除(3)対照(無切除)結果:F2世代(2017年夏の刺毛形質)葉面積:親世代の切除回数によって増大する傾向が認められた。刺毛数・刺毛密度:葉の表面・裏面とも親世代の切除回数によって減少する傾向が認められた。刺毛長:葉の表面・裏面とも親世代の切除回数によって増大する傾向が認められた。考察:刺毛数の減少については、F1世代で刺毛形成により多くのコストをかけた個体において、種子に配分する栄養が少なくなり、その結果として子(F2)の刺毛数が少なくなった可能性がある。刺毛密度:刺毛数の減少に反して、葉面積が増大した結果と考えられる。刺毛長:親世代では切除に応答して、葉の裏面の刺毛数と刺毛長は、切除回数が多くなるほど増加する傾向が認められた。また、F1世代の葉の表面では、親世代の無切除と1回切除の間では、有意差はなかったが、2回切除は他グループよりも有意に長かった。今回の結果は、被食によって現れた誘導防御形質が、何らかのメカニズム(エピジェネティック遺伝など)により、世代を越えて伝えられる継代防衛誘導の可能性を示唆している。F2世代に現れる刺毛形質の適応的意義の解明は、今後の検討課題としたい。


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