| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-07  (Oral presentation)

なぜ鳥は採食パッチを飛び去るのか?-種子散布研究を行動生態学からアプローチするー

*奥野修平, 青木俊汰郎, 橋詰茜, 中島啓裕(日本大学)

種子散布-種子を親木の被陰下外へと運ぶこと-は,植物の個体群維持・増大に影響を及ぼす重要なプロセスである.しかし,固着性の植物にとって,種子散布の実現は容易なことではない.植物は,種子の移動を様々な散布媒体に依存しているがこれらの動きをコントロールすることはできないからである.特に果実食鳥類による種子散布は,実現が困難であるように見える.鳥類は採食物の体内滞留時間が短く,少しの時間の結実木の滞在が種子散布失敗に直結するからである.しかし,実際は重要な種子散布者として機能している.このことは,鳥類が食べられる果実が目の前にある場合でも結実木を飛び去り,種子を親木の被陰下外へと運んでいることを示す.では,なぜ鳥類は果実が目に前に残っている場合でも採食パッチを飛び去るのだろうか?採食パッチの飛び去りの至近要因を解明するために,本研究では,小麦粉で作成した人工果実を用いた採食実験を行った.人工果実は,様々な重量・サイズ・糖濃度・タンニン濃度を作成し,これを餌台に設けた.餌台は3地点設置し,各餌台の前にビデオカメラを1台設置した.撮影された動画から,餌台を訪問した鳥類の採食行動を記録した.餌台は,2017年1月下旬-4月上旬と2017年12月中旬-2018年3月上旬の二回にわたって神奈川県藤沢市の日本大学敷地内に設置した.ヒヨドリにて検証したところ,採食個数は果実サイズに強く影響されることが分かった.果実サイズのみが異なる採食個数と滞在時間の結果に対し非線形回帰を行ったところゴンペルツ成長モデルが選択され,果実6.2mm,9.0mmの漸近値は7.63個,2.99個であった.すなわち,果実サイズ大小に関わらず経過時間と共に採食個数が頭打ちになっていた.また,頭打ちになった段階でほぼ同量の容積の果実が取り込まれていた.このことから,消化器官の容量には限界があり,上限に達することで飛び去りが起こることを示唆するものだと考えられる.


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