| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) J02-02  (Oral presentation)

ライチョウにはライチョウの乳酸菌!!

*土田さやか(京都府立大学生命環境), 小林篤(東邦大学理), 長谷川雅美(東邦大学理), 村田浩一(日本大学生物資源), 中村浩志(国際鳥類研究所), 牛田一成(京都府立大学生命環境)

ニホンライチョウ(Lagopus muta japonicus)は、本州中部の高山帯にのみ生息し、世界の最南端に分布する日本固有のライチョウの亜種である。近年、野生動物の高山帯への侵入による高山植生の破壊や、捕食者の増加、温暖化などが原因でその生息数が減少しており、環境省主導のもと、生息域内・域外双方からの保護増殖事業が展開されている。
生息域内保全の目標は、野生復帰個体群の創出と維持であるが、飼育個体の野生復帰のための課題は多く、その1つとして腸内細菌叢が挙げられる。野生下では主に高山植物や昆虫を食べており、これらには毒物や反栄養物質が含まれる。一方で飼育個体はペレットや小松菜に加え、抗生物質や抗原虫薬を投与されており、双方の腸内細菌叢には大きな違いがあることがわかってきた。具体的には、野生個体の腸内細菌叢のなかには高山植物のもつ毒性物質や反栄養物質の解毒・分解に関係する腸内細菌が存在しており、過酷な生息環境化での生存を可能にしているということが明らかとなってきた。
我々は、野生個体の持つ毒性物質や反栄養物質を解毒・分解する腸内細菌に注目し、飼育個体にプロバイオティクスとして投与することにより、生息域外と域内をつなぐ野生型腸内細菌叢を有した野生復帰個体群の創出を目指している。本発表では、これまでに野生個体から分離した乳酸菌と、その解毒・分解能について述べ、これらがいかに過酷な野生環境での生存を可能にしているかを議論したい。


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