| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) J02-06  (Oral presentation)

Effects of 100 year flood on riparian arthropods   --Interactions with eutrophication--

*SHOUWEI WANG, Junjiro N NEGISHI, Aiko HIBINO, Md Khorshed ALAM, YIYANG GAO(北海道大学)

大規模な攪乱は生態系に多くの影響をもたらす。扇状地河川では洪水とこれに伴う砂礫移動は、攪乱体制を構成する最も重要な要素である。砂礫に生息する徘徊性節足動物は生態系機能に重要な役割を果たしている。オサムシ科甲虫とクモは相互に作用し合うことで砂礫性生物の群集構造に影響を与えている可能性がある。一方で、河川の富栄養化は、ボトムアップの効果を介して河畔域の節足動物の群集構造や相互作用に影響を及ぼすことが知られる。本研究はオサムシ科甲虫とクモの相互作用に着目し、扇状地河川における大規模洪水に対する節足動物の応答を富栄養化の程度に関連づけて評価し、またそのメカニズムの一部を明らかにすることを目的とした。
2016年8月の3つの連続台風の影響を受けた北海道東部の十勝川支流札内川で行った。およそ10キロ区間に合計4つのサイトを、下水処理場の下流に2サイト、上流に2サイト(以後、富栄養化と自然状態サイトとよぶ)設定した。2016年5-7月、2017年4-10月に陸上昆虫密度および対象節足動物の摂食圧、2017年4-10月に水質、水生昆虫密度を測定した。また、窒素炭素安定同位体を用いて利用餌資源の重複率を算出した。解析には主に一般化線形(混合)モデルを用いた。
富栄養化はボトムアップの効果を通し、オサムシ科甲虫の密度を増加させた。一方、クモの密度を増加させなかった。また、オサムシ科甲虫の密度と摂食圧に正の関係、クモの密度と摂食圧が負の関係がみられた。オサムシ科甲虫の密度の高い冨栄養環境下では、餌資源利用ニッチが高い重複を示し資源をめぐる強い競争関係が示唆された。洪水後、富栄養化の程度にかかわらず二分類群は著しく減少した(全体平均で55.5%)。オサムシ科甲虫の減少に伴う摂食圧からの解放に関連するようなクモの特徴的な応答は見られず、両者の洪水への応答には生物間相互作用の改変に伴う間接効果は示唆されなかった。


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