| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-057  (Poster presentation)

単為生殖をするオガサワラヤモリの分子系統地理:混在する広域クローンと局所的クローン

*村上勇樹, 林文男(首都大学東京)

オガサワラヤモリ(Lepidodactylus lugubris)は、太平洋、インド洋の島々に広く分布するヤモリ類で、雌のみで単為生殖を行うことが知られている。日本では、小笠原諸島および大東以南の琉球列島で分布が確認されており、分布全体の北限集団であるとされている。また、ミクロネシア・ポリネシアを中心に、種内に遺伝的・形態的に異なる複数のクローンタイプが識別されており、これらは大きく2倍体クローンと3倍体クローンに大別される。これらクローンタイプの識別は、主に染色体数、背面の斑紋パターン、およびタンパク質多型に基づいて行われてきた。本研究では、南西諸島全域のオガサワラヤモリのクローン多型の実態を明らかにするため、新たにマイクロサテライトDNAおよびミトコンドリアDNA解析による分子生物地理学的解析を行った。
 小笠原諸島、大東諸島、沖縄諸島、宮古諸島、八重山諸島の計21島からオガサワラヤモリ748個体を捕獲し、8遺伝子座のマイクロサテライト解析を行った結果、17種類の遺伝的に異なるクローンが区別され、それぞれクローンO1、O2、M、T、D1〜D13と命名した。また、背面の色彩パターンにもクローン間で違いが見られた。一方、cyt b領域のミトコンドリアDNA解析を行った結果、5ハプロタイプのみが識別された。クローンO1、O2、D12,D13は南太平洋の島々で広く分布が確認されているクローンと体の斑紋および倍数性が同じであったので、南方からの移入によるものと考えられた。一方、クローンD1〜D11は大東諸島のみに見られ、共通のマイクロサテライトアリルおよびミトコンドリアハプロタイプをもっており、大東諸島内で最近独自に分化した可能性が高いと考えられた。クローンMおよびTは、それぞれ宮古島および竹富島から見つかったが、その由来については不明である。


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