| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-059  (Poster presentation)

塊状ハマサンゴ種における魚類食痕を基にした状態評価の可能性

*池内絵里(琉球大学・院理工), 井口亮(沖縄高専・生物資源), 中村崇(琉球大学・理, JST/JICA SATREPS)

サンゴ礁域に広く分布する塊状ハマサンゴ類は,他のサンゴ類に比べて高水温や水質環境の急変に比較的強いことから,地球規模・地域規模での環境変化に対する生物指標として重要視されている.また,塊状ハマサンゴ類は穿孔性の生物の棲家や他サンゴ種の定着場所となるなど,多様な生物群によって直接利用されている.その中でも魚類による塊状ハマサンゴ類の利用に関しては,群体生育や生残に直接負の影響を及ぼす生物的要因である.一般に,野外における塊状ハマサンゴ個体群では,隣接する群体でも食痕がほぼ見られない状態と高密度に食痕のついた群体が同時に観察されるが,この二者の違いが何に起因するかは明らかになっていない.そこで,本研究ではハマサンゴ群体表面上に残る魚類食痕形成要因について,生態学的な観点から新たな知見を得ることを目的として,野外調査,タグ付けした群体についての1年間の継続観察,観察群体を用いた飼育実験をおこなった.
 野外調査の結果から,白化している群体や部位で食痕が少なくなるということが示された.塊状ハマサンゴ類の群体間で顕著な食痕密度差が生じる要因として,魚類による健常群体部位選択の可能性が示唆された.さらに光合成効率の高い群体,さらに成長速度の増加する高水温期において食痕密度が減少したことから,ハマサンゴ群体自体の成長(修復)速度が相互に関連しあうことも示唆された.今回の発表では,予備的な飼育実験の結果も併せつつ,塊状ハマサンゴ群体間で生じる魚類食痕形成要因について統合的に議論したい.


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