| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-063  (Poster presentation)

同所的に生息するニホンジカとニホンカモシカのカメラトラップ法による土地利用比較

*菅野友哉(麻布大学), 高田隼人(麻布大学, 富士山科学研究所), 塚田英晴(麻布大学), 南正人(麻布大学, NPO法人あーすわーむ)

ニホンジカ(Cervus nippon;以下シカ)とニホンカモシカ(Capricornis crispus;以下カモシカ)は共に日本の山林に生息する反芻獣であるが、採食生態や形態に違いがみられる。本州中部のシカはササなどのグラミノイドを主に採食するグレイザーであり、細長い四肢を持ち冬期には積雪を避けて季節移動する。カモシカは双子葉草本や木本を選択的に採食するブラウザーであり、急峻な地形に適応的な太く短い四肢を持ち、定住的に生活する。本研究では、同所的に生息するシカとカモシカの土地利用を食物資源、地形、見通しなどの観点から検討した。2016年9月から2017年11月にかけて、長野県の浅間山中腹の調査地域にセンサーカメラを計20台設置し、植生(ササ群落、低木群落、伐採地)と斜度(平均傾斜31.7°の斜面、平均傾斜13.5°の平地)により5つのタイプに調査地を区分してシカとカモシカの撮影頻度を比較した。土地利用に及ぼす影響としてカメラ周辺の食物供給量、カバー量(見通しのよさ)、地面の傾斜度も併せて調査し、撮影頻度に及ぼす効果を一般化線形混合モデルにより解析した。その結果、シカが321回、カモシカが85回撮影され、後者では同一個体の撮影頻度が高かった。シカは四季を通してササの多い群落をよく利用したが、ササ資源量による効果は見られなかった。また、見通しの悪い場所での撮影頻度が低く、地面の傾斜による効果は見られなかった。カモシカは斜面をよく利用し、資源量及び見通しの違いによる効果は見られなかった。以上の結果からシカの土地利用には主要食物であるササの分布が大きく影響し、低木が茂る見通しの悪い場所は避ける傾向にあった。一方、カモシカの土地利用には傾斜地であることが重要であり、群落及び見通しの違いはあまり影響せず、2種の土地利用には明確な種間差が認められた。


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