| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-069  (Poster presentation)

都市孤立林における潜葉虫/寄生蜂群集-種構成と季節変化-

*鳥居裕太(名古屋大生命農), 綾部慈子(財 環境科技研), 肘井直樹(名古屋大生命農)

縮小・分断化が進む都市緑地において、生物群集がどのように形成・維持されているのかを明らかにすることは、島的な生態系における攪乱と修復の過程を考える上で重要である。そうした生物群集のなかで、植食性昆虫は寄主植物からの時空間的制約と天敵からの捕食によって、その個体群密度が維持されている。植物の特性や天敵による捕食・寄生圧は植食性昆虫の生存過程に大きな影響を与えるため、こうした孤立環境下での群集の成立過程と維持機構を解明するためには、まずこれらの種間関係を明らかにしていく必要がある。そこで本研究では、植食性昆虫のうち潜葉性昆虫に着目し、寄主植物と潜葉虫、および寄生蜂の三者で構成される群集について、それらの種構成や季節変化について検討した。
調査は、名古屋市内の相生山緑地(約123ha)において、2016~2017年の4~9月にかけて、ほぼ月に一度の頻度で行った。潜葉虫が新しく潜葉した葉を、毎回一定のライントランセクト上(全長約2 km;地上高2 m以下)で採取し、その後、研究室内で室温(25℃)、自然光下で約1か月間飼育した。飼育下において、潜葉虫に対する寄生の有無を実体顕微鏡で観察・記録し、羽化した潜葉虫および寄生蜂は、少なくとも科まで同定した。
その結果、30種の寄主植物から採取した1084枚の葉から、1280個の潜葉虫の孔道(マイン)が得られた。飼育により得られた成虫から、潜葉虫4目27種 (チョウ目20種、ハエ目3種、コウチュウ目3種、ハチ目1種)、寄生蜂4科29種(ヒメコバチ科23種、コマユバチ科4種、コガネコバチ科1種、アシブトコバチ科1種)が同定された。また、同じ寄主植物上において発生時期の異なる複数種の潜葉虫が確認され、これらの潜葉虫は時空間的にすみわけている可能性が示唆された。一方で、潜葉虫の発生ピークに同調して出現した寄生蜂が複数種確認され、これらの寄生蜂は寄生様式の違いによって同時期に共存可能であると考えられた。


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