| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-074  (Poster presentation)

琉球列島干潟域の魚類群集はなぜ地理的モザイクパターンを示すのか?-複雑ネットワークからみた群集形成要因の推定-

*國島大河(琉球大・院・理工), 井口亮(沖縄高専・生物資源), 立原一憲(琉球大・理)

一般に群集構造は,競争や共生などの種間作用と物理的な環境要因が相互的に影響することで決定する.しかし,これまで種間作用の検出は難しく,群集の形成要因の検証は,環境要因のみに着目したものが多かった.本研究では,近年,種間作用の解析法として確立されつつあるネットワーク解析と,微細環境要因を変数とした統計モデリング解析から,琉球列島の干潟における魚類群集構造の形成要因を検証した.

2015,2016年の4–9月に九州(宮崎・鹿児島)から西表島までの7地域44地点の干潟で,1 m2のコドラートを各干潟平均16.4個設置し,干潮時に定量的な魚類採集と環境計測を行なった.粒径組成の平均値から,干潟の底質タイプを泥質・砂泥・砂質に区分した.各種の在・不在データに基づくクラスター解析から,各群集の類似性を明らかにした.また,各底質タイプでの優占種と指標種(砂グループ,泥グループ)をそれぞれ選出した.野外での定量調査で得られた各種の出現データと環境データ(塩分,底質硬度,水深,泥分,砂分)から,各グループの生息環境を種ごとに推定した上で,構築されたネットワーク中での種間関係を推定した.

その結果,奄美大島以南では,同じ島嶼内でも群集構造が異なる地理的モザイク状分布を示した.そこで,干潟への加入様式を推察すると,奄美大島以南では,島嶼や底質タイプにかかわらず,ランダムな加入分散が示唆された.次に種間ネットワークに基づくコミュニティ抽出を行った結果,各グループがそれぞれ近接した位置に配置された.さらに,統計モデリングの結果から,泥グループは高泥分,低塩分・底質硬度・砂分,砂グループがその正反対の微細環境を好むことが示された.以上より,奄美大島以南の干潟では,島嶼間で同等な加入が生じているにもかかわらず,微細環境の違いによって生存選択がかかり,主な構成種が異なることで魚類群集のモザイク状分布が形成されたと考えられる.


日本生態学会