| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-081  (Poster presentation)

東北地方太平洋沖地震後の岩礁海岸の帯状分布:潮間帯全域での6年間の変化

*織田さやか(北大・院・環境), 岩崎藍子(北大・院・環境), 大平昌史(北大・院・環境), 金森由妃(北大・院・環境), 立花道草(北大・院・環境), 野口遥平(北大・院・環境), 石田拳(北大・院・環境), 岩渕邦喬(北大・院・環境), 野田隆史(北大・地球環境)

帯状分布は岩礁潮間帯に見られる固着生物の普遍的な分布パターンである。2011年に発生した東北地方太平洋沖地震は、東北全域で巨大津波と海岸の沈降を引き起こした。これらのイベントはこの地域の帯状分布にも大きな影響を与えた可能性がある。そこで本研究では8種の固着生物を対象に三陸沿岸の5つの海岸において潮間帯全域での帯状分布の地震後6年間の変化を記述し、さらにその種差の原因と帰結を明らかにすることを目的に、それぞれの種において帯状分布とその回復度(地震前の推定される帯状分布との一致度)の経年変化、遷移ニッチの違いが帯状分布の回復度に及ぼす影響、固着動物と海藻の間で帯状分布の回復度の違い、を評価した。その結果、固着生物8種の地震後の帯状分布の変化の仕方は種によってさまざまであり、帯状分布の回復度は、地震4年後と6年後で遷移前期種ほど早い傾向があることが認められた。また、いずれの年においても固着動物と海藻の間で帯状分布の回復度の平均値には有意な違いは認められなかったものの、固着動物では種間で帯状分布の回復度が大きくばらつき、2017年の時点でもムラサキインコガイではそのアバンダンスは地震前より顕著に減少し、マガキでは顕著に増加していた。以上の結果は、潮間帯全域で見た場合、地震後6年間経っても岩礁潮間帯の固着生物群集は未だ回復しておらず、それが元にもどるにはさらに長い時間を要することを示唆している。


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