| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-142  (Poster presentation)

録音データにもとづくリュウキュウコノハズクの生息密度評価

*井上遠(東京大学), 角谷拓(国立環境研究所), 吉田丈人(東京大学), 鷲谷いづみ(中央大学)

生物個体数の長期トレンドを把握することは、環境変動の影響を早期に検出し、有効な対策を行う上で欠かすことができない。一方で、そのような長期モニタリングには、通常大きなコストがかかるため、精度を保ちながら観測を簡便化・自動化する手法の開発が欠かせない。そこで本研究では、録音データに基づいて森林性鳥類の生息密度を評価する手法を検討するため、餌および営巣場所に関するニッチの重なりが想定される一方で、鳴き声の音響特性が異なるリュウキュウコノハズクおよび、リュウキュウアオバズクを対象に録音による調査を行い、音声ソフトを用いて両種の鳴き声回数を抽出し、鳴き声回数に影響する要因を分析した。

録音データの取得は、2種のフクロウの繁殖期前半にあたる2017年4月に行った。奄美大島の全域に48地点の録音地点を設け、両種が活発に活動する日没後4時間、録音を実施した。音声解析ソフトを用いて2種の鳴き声回数を自動で抽出した。

分析では、録音地点から半径100m以内の樹冠サイズ指数(樹木サイズを指標する)、周辺植生面積、標高を算出し、両種の生息密度に影響を及ぼしうる環境変数とした。その上で、応答変数を鳴き声回数、説明変数を環境変数・他方の種の鳴き声回数として、統計モデルを用いて解析を行い、両種の鳴き声回数に影響する要因を検討した。その結果、両種の鳴き声回数には、気温や風速が影響しており、録音データを用いて生息密度を評価する際には、それらの影響を統計的手法で除去する必要があることが明らかになった。気象条件による分散を調整した鳴き声回数には、もう一方の種の鳴き声回数が影響しており、片方の生息密度が高い場所ではもう一方の種の生息密度も高いことが示唆された。リュウキュウコノハズクよりも体サイズの大きいアオバズクでは、樹冠サイズ指数が正の効果をもっており、森林の樹木サイズが生息密度により強く影響している可能性が考えられる。


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