| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-144  (Poster presentation)

繁殖干渉は植食性昆虫における寄主分割の要因となるか―ミカンコミバエ種群を例にして

*北野大輔(滋賀県大院・環境科学), 藤井暢之(滋賀県大院・環境科学), Sujiono(BBPOPT), 山上繁政(滋賀県大院・環境科学), 来田村輔(三重大院・生物資源), 本間淳(滋賀県大院・環境科学), 塚田森生(三重大院・生物資源), 西田隆義(滋賀県大院・環境科学), 沢田裕一(滋賀県大院・環境科学), 高倉耕一(滋賀県大院・環境科学)

 ミカンコミバエBactrocera dorsalis(以下、BD)とB. carambolae(以下、BC)は極めて近縁で、ミカンコミバエ種群と呼ばれるグループに属す。いずれの種も果実を食害する検疫害虫であり、原産地のインドネシアでは同所的に分布している。両種は極めて近縁であるにもかかわらず、BDはマンゴーを、BCはスターフルーツを主な寄主としている.このように近縁種間で寄主利用パターンが異なるのはなぜなのか、その要因を理解することは進化生態学における重要な論点である。本研究では、近縁種間の負の相互作用である繁殖干渉が両種の寄主利用パターンの要因であるとの仮説を立て、これを検証した。
 2種の頻度が各種の繁殖成功度に及ぼす影響を明らかにするため、ケージ内での飼育実験を行った。未交尾成虫の合計ペア数を24に固定したうえで、2種の頻度を変えた(BD: BC = 24: 0、16: 8、12: 12、8: 16、0: 24)。行動観察を行い、求愛行動が起こった種の組み合わせとその成否を記録した。観察終了時に交尾していたペアを隔離し産卵させて、蛹のステージまで飼育した。そのデータに基づき、求愛行動における両種の種認識は正しいか、両種の適応度が他種の頻度に影響されるかを解析した。
 種認識能力について、配偶におけるオスの種認識は両種ともに不完全であり、種間で差はみられなかった。メスの適応度については、BDでは他種の頻度に有意に影響されなかった。対照的に、BCメスの繁殖成功度は他種の頻度が高くなると小さくなった。この結果から、BCメスはBDオスから一方的な繁殖干渉を受けていることが示唆された。
 既存の研究から、マンゴーはスターフルーツよりもBDおよびBCにとって適した寄主であることが明らかになっている。したがって、BDとBCの寄主利用パターンは、繁殖干渉の影響を受けないBDが質の高いマンゴーを独占し、干渉の影響を受けるBCがそれ以外の果実を利用している結果であることが示唆された。


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