| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-153  (Poster presentation)

中日本と西日本におけるニホンザルの群れサイズと行動圏の関係

*寺山佳奈(高知大学), 清野紘典((株)WMO), 海老原寛((株)WMO), 滝口正明(自然環境研究センター), 加藤元海(高知大学)

ニホンザルの群れサイズと行動圏の大きさは生息地の質に影響を受けることが知られているが、具体的に生息地の質と環境条件を関連付けた研究は加害群では無い。全国的にニホンザルによる農業被害などの問題が深刻化しており、被害対策を講じるためにもニホンザル加害群の行動に影響を与える環境条件を調べる必要がある。冬季は自然に存在する餌資源が少なく、食物の入手が容易な農地への加害群の依存度が高まることが考えられる。生活環境によってニホンザルの行動が異なることが知られており、中日本の福井県と西日本の広島県でも積雪深などの環境条件が異なる。本研究では、福井県と広島県に生息するニホンザル加害群の群れサイズと冬季の行動圏の大きさそれぞれに影響する環境条件について明らかにすることを目的とした。各地域で行なわれたニホンザル15群に対するモニタリング調査結果のうち、各群れの個体数と位置情報を使用した。位置情報をもとに、固定カーネル法を用いて行動圏とコアエリアを推定し、コアエリア内に含まれる傾斜角度を求めた。行動圏に含まれる群落を常緑広葉樹林、耕作地、市街地などの8つに分類した。冬季の環境条件として行動圏内の積雪の深さを最寄りの気象観測地点から推定した。傾斜角度と積雪の深さを環境条件とし、ニホンザルの群れサイズと行動圏の大きさの関係について単回帰分析を行なった。福井県と広島県の群れを混在させた場合は傾向がみられず、福井県のみでみた場合に群れサイズは積雪が多くなるほど小さくなる傾向がみられた。これは積雪が多い福井県では50 cm程度の積雪があり、冬季では農作物等の餌資源が乏しいことが影響していると推察される。コアエリアの大きさは傾斜が急になるほど大きくなる傾向があった。


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