| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-154  (Poster presentation)

平地と山地のホシミスジ個体群の生態特性

*中橋優芽香(神戸女学院大学大学院), 遠藤知二(神戸女学院大学)

ホシミスジは、現在関西の都市圏を中心に広く分布しているが、兵庫県西宮市の住宅地では1950年代前後からすでに記録があり、その都市進出は約70年近く前から生じている。本種の幼虫の食餌植物はもともと露岩地に生育する野生シモツケ属であり、都市部での分布拡大は住宅地に植栽されたユキヤナギやコデマリを利用することによって起きている。しかし、都市で分布を広げるホシミスジ個体群が野生シモツケ属植物に依存している個体群となんらかの生態的特性の違いを示すにいたっているかどうかは、明らかではない。本研究では、古くから住宅地に進出している西宮市南部の平地個体群と露岩地のイブキシモツケを利用している宝塚市武田尾の山地個体群を比較した。
西宮市岡田山における2015-2016年の平地個体群の調査では、ホシミスジは5月中旬から成虫が出現し、10月まで活動が見られた。両年とも出現初期に大きな個体数のピークがあり、その後は明瞭なピークはなかったが、おそらく部分的な3化があると考えられた。捕獲個体数は、両年ともオスに偏っており、大部分は食餌植物のパッチ周辺で発見された。しかし、食餌植物のないパッチ間では、性比のオスへの偏りはそれほど大きくないか、またはなかった。武田尾における2017年の山地個体群の調査では、成虫の活動期間は5月下旬から9月上旬でやや短く、出現初期の第1世代に大きなピークがみられる点は共通していたが、年2化と考えられた。また、捕獲個体の性比は、平地個体群とは対照的に、ほぼ1:1だった。また、食餌植物は道沿いの岸壁や擁壁に密な群落を形成しており、チョウの活動はそれらの群落内に限定されていた。群落間の移動頻度は低いと考えられた。
これらの結果から、ホシミスジの平地個体群では、メスが羽化した食餌植物のパッチを離れ、散在する幼虫食餌植物パッチを探索していることが示唆された。


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