| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-206  (Poster presentation)

環境DNA手法を用いたオオサンショウウオの繁殖期の推定

*森本哲平, 中尾遼平, 源利文(神戸大学)

オオサンショウウオ(Andrias japonicus)は、ダムや堰の設置などの生息環境の破壊によって個体数が減少しており、IUCNのレッドリストにおいて準絶滅危惧種として掲載されている。また、オオサンショウウオの保全には、生息地だけでなく繁殖場所の把握も重要である。オオサンショウウオの繁殖は8月末から9月にかけて行われるといわれており、体外受精した卵は40〜50日で孵化するといわれている。オオサンショウウオの調査は、一般的に侵襲的な上に、調査コストや労力が高いことから、広範囲かつ長期的な繁殖行動の調査が難しい。近年、従来手法のデメリットを補完する、環境DNA分析といわれる手法が発展している。さらに、精子にはミトコンドリアDNAに比べて核DNAの量が多いことを利用して、環境DNA中の核DNA/ミトコンドリアDNA比が繁殖期の指標となりうることが魚類で報告されている。本研究では、環境DNA分析手法を用いてオオサンショウウオの繁殖期と繁殖場所を推定することを目的とし、オオサンショウウオが生息している羽束川(兵庫県)で定量PCR法による環境DNAの季節変動をモニタリングした。結果として、繁殖期といわれている8月末から9月の初めに核DNAのコピー数が著しく増加し、核DNA/ミトコンドリアDNA比でも繁殖期で値が高くなった。また10月以降にも、繁殖期といわれている9月初めまでと同様に比の値の増加見られた。推定された繁殖場所は、羽束川の上流部であった。本研究の結果は、環境DNA手法によってオオサンショウウオの繁殖期と繁殖場所を推定することが可能であることを示した。本手法を用いて生物種の生息地や繁殖場所を迅速かつ非侵襲的に把握することで、希少種などのより効率的な保全につながると考えられる。


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