| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-210  (Poster presentation)

河川における二ホンウナギの生息環境

*松重一輝, 望岡典隆(九大・院・農)

近年,ニホンウナギの漁獲量は著しく減少している.その原因のひとつとして河川環境の劣化が示唆されており,河川における生息環境の保全が急務となっている.本種は下流域から中上流域に至るまでの幅広い河道区間に分布する.そのため,河道区間やそれ以下の空間スケールごとに生息環境を把握する必要がある.本研究では,リーチスケールと瀬・淵スケールにおいて,ニホンウナギにとって好適な生息環境を明らかにすることを目的とした.

2016年6–11月および2017年5–11月に,鹿児島県の伊作川,花渡川,馬渡川,前川において,電気ショッカーによる定量採集と物理環境(河床勾配,水際の状況,水深,流速,河床材料など)の計測を行った(全138地点145個体).これらの結果を潮汐の影響およびニホンウナギの体サイズによって,1)感潮域・小型個体(≦TL254 mm),2)感潮域・大型個体(≧TL255 mm),3)非感潮域・大型個体の3群に分けて統計解析を行った.a)リーチスケールとb)瀬・淵スケールのそれぞれについて,目的変数をニホンウナギの個体数密度または在・不在,説明変数を物理環境項目とする一般化線形モデルを構築し,ステップワイズ法でモデル選択を行った.モデルの精度については目的変数に応じてスピアマンの順位相関係数またはROC分析によって検証した.

a)では高い精度のモデルが(Rs>0.7, AUC>0.7),b)では中程度の精度のモデルが得られた(Rs=0.4–0.7).その結果,感潮域の小型個体は,リーチスケールでは河床勾配の小さい区間を,瀬・淵スケールでは水深が20 cm程度で流速が小さく,河床に礫が多い地点を好む傾向がみられた.感潮域の大型個体は,リーチスケールでは護岸率が低い区間を,瀬・淵スケールでは河床に巨石の多い地点を好む傾向がみられた.非感潮域の大型個体は,リーチスケールでは河床勾配の小さい区間を,瀬・淵スケールでは水深が大きく河床に巨石と礫が多い地点を好む傾向がみられた.


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