| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-229  (Poster presentation)

信濃川水系において日本産メダカ2種は交雑しているのか?

*入口友香(近大院農), 高田啓介(信大理), 北川忠生(近大院農)

日本国内のメダカは,遺伝学的・形態学的・生態学的な差異から,分類学上キタノメダカOryzias sakaizumiiとミナミメダカOryzias latipesの2種として扱われている.メダカ2種は基本的に水系レベルで分布を異にするが,京都府の由良川水系および新潟県・長野県の信濃川水系では上流域にミナミメダカ,下流域にキタノメダカが生息していることが明らかとなっている.我々が実施した先行研究(Iguchi et al. 2018)では,由良川水系の中流域において,メダカ2種が交雑帯を形成していることを報告した.しかし信濃川水系におけるメダカ2種の分布状況や交雑実態の詳細については明らかとなっていない.そこで本研究では,信濃川水系におけるメダカ2種の分布状況と交雑実態を把握することを目的として,核DNAマーカーによる集団遺伝学的解析を実施した.信濃川水系の2種の分布境界付近にあたると想定される中流域を中心とした集団から最大30個体を採集した.これらの個体について,M-marker 2003と呼ばれる核遺伝子のPCR増幅断片長多型をもとにした種判別マーカーのなかから異なる染色体上にある10遺伝子座を選定して解析した.その結果,長野県と新潟県の県境付近を境界として,2種の分布が上流域と下流域で明瞭に分かれていることが明らかとなった.一部の地点で両種の対立遺伝子が混在していたが,その頻度や不連続性から人為的移入によるものであると考えられた.信濃川水系では由良川水系のようなメダカ2種の交雑帯が形成されていない要因として,各種内の地域集団によって生殖的隔離の度合いに違いがある可能性や,地形的・地史的な背景によって物理的に2種の交流が生じていない可能性がある.


日本生態学会